この記事では『怪物公爵と契約公女』の71話のネタバレと感想をお伝えしていきます。
ネタバレはしてほしくない!という方はご覧にならないでくださいね。
静かなる争い
マディア太后は目の前までやってきたサルバトール公爵に訪問の理由を問います。
「ここには何の用かしら?サルバトール公爵」
ここはマディア太后の招待がなければ入ることの出来ない特別な場所。
そこにずけずけと入り込んできたサルバトール公爵は招待状を持っていると返しました。
「まぁ!招待状を?私には身に覚えがありませんが」
わざとらしく口元に手を当て驚くマディア太后。
公爵ほどの人物を動かすほどの招待状なら余程大切なことが書かれていたということ、そしてそう言った場合はマディア太后の経験上嘘が書かれていない、そうあっけらかんと話すマディア太后にサルバトール公爵は苦虫をかみつぶしたような顔をします。
マディア太后VSサルバトール公爵。国の中でもかなり高位の2人の舌戦は静かですが、ひどく恐ろしいですね。もしもここにいたら、逃げ出したくなりそうです。
一瞬表情を曇らせましたが、そうですねと平常通り頷くサルバトール公爵に意外に動揺していないのねとマディア太后は不思議に思います。
サルバトール公爵の元に届いたひどい内容の手紙。愛する娘の死に関することが書かれたそれに娘の死を覚悟するよりも送った方にも相応の覚悟が必要だと進言します。
ですが、マディア太后は近くに生える葉に指を掛けます。
あまり力を入れずに簡単に折れてしまった葉。
「公爵が思っているより送り主の方はなんとも思っていないかもしれませんよ」
はらりと落ちる葉にマディア太后は続けます。
「拾った者の命はそれを拾った人間のもの」
命の所有権など他人にあるはずがないのに、まるでそれがあるかのように話すマディア太后は向けられる鋭いエメラルドの瞳に過去を思い出します。
徐々に場の雰囲気の温度が下がっていくのがわかります。見ているだけで背筋が寒くなるような2人の会話。この後が怖いような、気になるような、、、
女が男の所有物だった時代が恋しいと言いながらもスぺラード侯爵は女であるマディア太后に安々と頭を下げ、大した教養もないくせに自分は優れた人間だと思いあがるエリー。
最初からこの2人のことをマディア太后は気に入っていませんでしたが、スぺラード侯爵家の闇の力には興味がありました。
そこで適当に結婚をさせ、手駒に引き込み、これまでのスぺラード侯爵のこれまでしてきたことを暴露し、王宮から娘を追いやってスぺラード侯爵家を揺さぶれば、闇の力は簡単に手に入れられるとマディア太后はほくそ笑みました。
そんなマディア計画を壊したのは突如現れたレスリー。
先手を打つつもりで後ろ盾をした裁判には負けたが、また少しずつ近付いて来た闇の力を入れるチャンス。
その機会を与えたのは他でもないレスリーです。
ですから、マディア太后はあんな手紙を送ったのです。
サルバトール公爵への友情とレスリーへの厚意のつもりで
結局はマディア太后の思惑でスぺラード侯爵家も振り回されていたんですね。そう考えれば彼らも可哀そうな気もしますが、あの行いは許せないような気がします。
「ところで」
そうサルバトール公爵が切り出したのはアーレンド王子の結婚相手にマディア太后がエリーを選ぶようにと進言した話。
白々しいまでに話しを切り替えたサルバトール公爵にマディアは内心毒づきながらもエリーほどアーレンド王子にふさわしい女性はいない。その内容に同意するように求めます。
ですが、サルバトール公爵はなにも応えません。
高飛車な女。最初に見た時からマディア太后にとってサルバトール公爵は他とは違って見えました。
憧れの人はひどく憎い人
イトバーナの最後の王と王妃の間に生まれたマディア。
両親から溺愛されたマディアでしたが、その娘のために両親は歴史ある伝統を変えることはありませんでした。
帝国との摩擦で戦争が長引き、国は衰退。最後に残った王女、マディアは国の存続のために用意された男と結婚し、王位をその男に渡さなければいけません。
「ありえない」
結婚が間近に迫ったマディアは王族でもない男に王位を渡さなければいけない屈辱に拳を握ります。
もっと上にいけば、誰にも見下されない地位までいけば、そんな屈辱に耐えなくて済む。
イトバーナを去る日の夜、亡くなった両親に花を手向けたマディアはそう夜の窓を見上げました。
愛した自分の国を他の人に任せるのはきっとすごく悔しいですよね。自分を愛してくれた両親が守り抜いた国を手放す屈辱、時代の流れで仕方がないとは言え、マディアの苦しさは想像を絶するものだったでしょう。
そうしてマディアは皇帝との婚姻式を迎えます。
その日、初めでサルバトール公爵を見ました。
他の令嬢たちとは違いドレスではなく制服を纏い、堂々と公爵の隣に後継者として立つその姿はひどく輝いて見えました。
アシェラ・ベンカン・サルバトール小公女
見つけた理想の姿にマディアは親しくなりたいと思いました。自分もそうなるために
ですがその一方でマディアの胸の中には黒い物が溜まります。
自分よりも高い位置にいる自分を惨めにさせるサルバトール公爵が憎い。
イトバーナの王女として今では太后まで登り詰めたマディアですが、いまだに目の前に立つサルバトール公爵の凛々しい姿にひどくコンプレックスが刺激され、憧れは少しずつ憎しみに変わっていきます。
憧れって時に残酷ですよね。憧れてたけど思ってたとは違ったとか、自分は憧れになれないとか、気付いてしまうと途端に相手が憎くなることがあります。きっとマディアもそんな瞬間があったのではないでしょうか。
警告
招待状は勘違いだったかもしれないと頭を下げたサルバトール公爵はなぜそれが自分の元に届いたのかを考えるための知恵をくださいとマディア太后に求めます。
「何かを伝えたかったのではないかしら?公爵の友人として」
そんなマディア太后の言葉にサルバトール公爵の瞳は鋭く光ります。
「私は自分が何と呼ばれようと構いません。それが友人だろうが、怪物だろうが気にも留めません」
ですが、それには条件があります。
「娘にさえ手を出さなければ」
仮面の向こうで光る瞳に臆することなくマディア太后は手紙の送り主に警告を与えに来たと笑います。
母親として娘を守るのは当然のこと。
まさかそこまで娘を大切にしているとは思わなかったとマディア太后は肩を揺らしますが、腹の中では所詮契約で繋がれた親子に過ぎないと毒づきます。
さて、招待状の送り主が誰であろうと、なぜマディア太后がアーレンド王子に肩入れするのかはわかりません。
ですがサルバトール公爵はこれだけはハッキリ言っておく必要があり、一歩、また一歩と足を進め、マディア太后との距離を詰めます。
「私を敵に回さないほうがいい。この帝国で私に勝てるものいないと」
それだけ言い残すとサルバトール公爵は庭園を出て行きました。
そんな背中にお茶を持ってきた侍女は反逆罪だと騒ぎますが、マディア太后はそんなことをしてもあの強い人を揺らがすことは出来ないと笑い、腕に抱えていた花束を見ます。
サルバトール公爵に渡す予定で用意した花束。こうなれば本人に渡したほうが良い。
庭園を去るマディア太后は一体どこへ向かうのか
穏やかな攻防も終わりを迎えましたが、娘を守りたいサルバトール公爵VS憧れの憎い人と戦いながら闇の力を手に入れようとするマディア太后。やっぱり高い地位の人たちの舌戦と言うのは恐ろしいものですね。ひんやりとした空気が始終感じられました。
屋敷に帰るために馬車まで戻ってきたサルバトール公爵は痛む頭を抱えます。
自分のことを友人と呼んだマディア太后。一度たりとも私的に話したことさえない彼女にそう呼ばれる理由はありません。
心配する執事に気にするなと伝え、テフェンテールから返事がないことに溜息を吐きます。
病気のことだけでもなにかわかればと悩むサルバトール公爵の耳に自分のことを呼ぶ、あの声が聞こえます。
さっさと馬車に乗ればよかった。そう後悔しますが、もう後の祭りです。
近寄ってきた陛下に胸に手を当て挨拶をします。
ここに来た用を聞かれますが、道に迷ったと嘯きます。まさかマディア太后が自分の娘を傷つけようとしているから警告しにきましたと馬鹿正直に答えるわけにいきませんから
不思議そうな顔をする陛下ですが、そうだと言われてしまえばさすがの陛下でも真意を問うことは出来ません。
無理矢理納得した陛下は話しを変え、レスリーが受けている二次試験の結果がそろそろ出る頃だと口にします。
「今度の試験発表はマディアが行うことになった」
元はアルテールが行う予定でしたが急に自分が行くと言い出した。そう耳打ちされた内容にサルバトール公爵はそこに隠された思惑に考えを巡らせます。
皇后であるアルテールを押しのけ、太后であるマディアが行く。
皇后が最近忙しくしているから体でも壊したら大変だともっともらしいことを言って周りを説得したそうですが、アルテール皇后はマディア太后の本性までは知らないので止めることも出来なかったようです。
一体何を企んでいるのか
そんな陛下にサルバトール公爵はある話を始めました。
「ここに来るときに王室の池に乱打の花が咲いていた」
突然の花の話に陛下はぽかんとした顔をしますが、話は続きます。
「池のほとりに大人しく咲いている分には問題ないが、一度増え始めたランダの花はてのつけようがない」
青いランダの花に覆いつくされた王室の池の中央に立つように鋭い剣を持ったサルバトール公爵。
「ランダの花が池を飲み込んでしまう前に根を絶っておいた方がいい」
ランダの花=マディア太后のことなのでしょう。じわじわと侵食するマディア太后の思惑。このままにしておけば、レスリーだけではなくこの帝国まで根底から揺るぎかねません。周囲に人がいて、直接的な表現が出来ないサルバトール公爵の例え話。陛下はどう捉えたのでしょうか。気になるところです。
その頃、ベッドで目を覚ましたレスリーは眠い目を擦ります。
早く家に帰りたいなと思いながら部屋を出ると迎えに来たレンティウスとコンラッドが扉の前にいました。
そんな2人にあと数日の辛抱で家に帰れると思い直して、あくびをかみ殺しながら廊下を進みます。
朝のミサでも眠ってしまいそうなほど眠い。ですが、一番前の席なので寝てしまったらすぐに気付かれてしまいます。
なんとかこの生活に慣れなくてはと眠い目を擦りながら歩いているとどんっとレスリーの体がピンク色の髪をした同じ服装の女の子にぶつかってしまいました。
慣れないベッドってなかなか寝付けないですよね。ましてやレスリーは命を狙われているわけですから、そんなに安眠できるわけがありません。早く試験を終えて、暖かく迎え入れてくれるサルバトール家に戻る日が楽しみです。
『怪物公爵と契約公女』71話の感想・考察
静かな戦いと警告、そしてレスリーの今後が気になる71話となりました。
まずはマディア太后VSサルバトール公爵の舌戦。腹の中を探り合うような2人の会話でしたが、サルバトール公爵の警告を受けたマディア太后はどう出るのでしょうか?
もちろん諦めることはないと思うのですが、このままレスリーに手を掛けると言うならもちろんサルバトール公爵は容赦をしないでしょう。この後の2人の戦いが恐ろしいながらも気になるところです。
そしてもう一つは陛下の出方。いくら信頼しているサルバトール公爵とはいえ、相手はマディア太后。自分の身内をどこまで追い詰めるのかがこの戦いの勝負を決するきっかけにもなると思います。
最後に気になるのはレスリーですよね。一体誰にぶつかってしまったのでしょうか?きっとこの話のターニングポイントなんだと思いますが、それよりもレスリーには幸せになってほしいので、出来るだけ穏やかにサルバトール公爵家に帰れることを祈るばかりです。
マディア太后、サルバトール公爵、陛下などなど様々な人の思惑が混じり合う71話となりました。
色々と気になることがありますが、一番はレスリーの試験です。その結果が出そうな72話。更新が楽しみ過ぎて待ちきれないですね!