悪役のエンディングは死のみ【30話】ネタバレと感想!




この記事では『悪役のエンディングは死のみ』30話ネタバレ感想をお伝えしていきます。

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ネタバレはしてほしくない!という方はご覧にならないでくださいね。

主に向けた刃

雨の中一心に木剣を振るうイクリスの背中に走るいくつもの傷跡。

冷たい雨の中のその背中はあまりにも痛々しくてエカルテは静かにぬかるんだ地面を一歩、また一歩とイクリスに近付いていきます。

ざあざあと降りしきる雨の中、イクリスの耳に雨音に混ざる足音が聞こえます。

もう少しでイクリスの元に着く。その瞬間、鋭い木剣の剣先がエカルテの喉元に突きつけられます。

「、ご主人、様」

木剣を向けたのが敵ではなくエカルテだと言うことに気付いたイクリスの顔は真っ青になります。

「雨が、雨が降っているわ。イクリス」

それでもエカルテはイクリスに優しい声を掛けます。

雨で濡れた木剣は冷たく、触れた首筋から熱を奪う。それを退けて欲しいとイクリスに告げると木剣は地面に落ち、粉々に砕けてしまいます。

壊れた木剣の前に崩れ落ちるイクリスは頭を垂れて許しを請います。

「どうか、罰を」

その瞳の先にエカルテは何があるかに気付き、ぎゅっと傘の柄を握り締めました。

わん

奴隷が主に剣を向けたらひどいと死刑とかですよね。

実際に裁判で殺されてしまった奴隷もたくさんいると聞きます。

そんな状況でエカルテに剣を向けてしまったイクリス。

いくら強くても貴族の命令には逆らえませんから青くなるのも当然ですよね。

安全ではないこと

イクリスの視線の先にあるもの、それはエカルテの指にはまった真っ赤な指輪。

罰を与えるための主人の指輪です。

もしもこれがゲームならきっとエカルテはここで殺されていたでしょう。そして生き残る選択肢を見つけるまで何度も何度もリセットをする。

ですが、ここは現実です。殺されるわけにいきません。

突如として国を失い奴隷に成り下がった貴族。自分を金で買った女の前で生き残るためにひれ伏すしかないイクリスの首には指輪と対になった首輪が光ります。

生き延びるために何と声をかければいいのか。

「きっと大丈夫ですよ。心配しないで」

そんなヒロインのような言葉をエカルテが掛けられるはずもありません。

「もしかして誰かにいじめられているの?」

話を逸らすように雨の中でひとり訓練をしていたイクリスを心配する声を掛けます。

「言ってごらん。誰の命令?」

イクリスの冷えた頬に触れ、自分の方に顔を向かせるとエカルテの視線とイクリスの視線が絡み合います。

「誰の命令でもありません」

「ただ一刻も早く正式な騎士になってご主人様に仕えたいと思い、自発的にやっていただけです」

その言葉は忠誠心からなのか、それとも恐怖心から来ているものかはわかりません。

ただイクリスの頭の上でちかちかと光る好感度のバロメーターはたしかに選択が間違っていないことを教えてくれます。

にゃあ

なんだか切ない関係ですね。死にたくないエカルテとイクリス。

そのためにイクリスを選んだエカルテとエカルテに殺されたくないイクリス。

お互いの利害は一致しているのに、それがかみ合わないもどかしさ。

見ているこっちもなんだか悲しくなってきてしまいます。

恐怖からの逃亡

雨に打たれないよう天幕を張ってあげようか?剣も折れたから新調しなくちゃ、すぐに武器商を呼んで

そうエカルテは矢継ぎ早に言葉を紡ぎます。まるでイクリスのご機嫌を取るような言葉の数々。それを遮ったのは他でもないイクリスでした。

「それより、もっと僕に会いに来てほしいです」

この家に来てから一度も会ってくれないエカルテ。

忘れられたかと思うほどの長い時間を経てようやく見られた主の顔をじっとイクリスは見つめます。

その眼差しにエカルテはあることに気が付きました。

いとも簡単に人を切り殺せるくせに躊躇いなく跪くイクリスに感じたあの違和感。

エカルテが好感度のために優しい主人の仮面を被っているように、イクリスもまた生き残るために忠犬を装っているだけなのです。

それに気付いたエカルテはあることを思い出します。

安全だと思ったイクリスルート。ですが、いくら安全とは言え、それは他のつり橋よりほんの少し頑丈と言うだけ。

そもそもエカルテはハードモードにいるのです。ノーマルモードでない以上、危険が遠ざかったわけではありません。

「あなたが望むのならいくらでも」

優しい主人の仮面を被ったエカルテに好感度の光が灯り、25%と数字を示します。

「今日の訓練は終わりにしなさい。これは命令よ」

風邪を引いてしまうからと気遣いを見せたエカルテはそれだけ言い残すと立ち去ろうと踵を返します。そんなエカルテをイクリスが呼び止めます。

「罰はないんですか?」

「ご主人様に傷を負わせるところでした」

傷を負わせるどころか、殺されるところだった。

にっこりと笑ったエカルテは忠実な騎士をこれしきのことで罰するなんてバカのやることよと笑い、わざとじゃなかったんでしょ?と確証もない言葉を残して去っていきました。

結局「許す」とも「立ち上がれ」とも言われなかったエカルテだけの騎士、イクリスはその場に蹲ったまま、立ち去るエカルテを引き留めることはありませんでした。

ようやく自分がハードモードにいることに気付いたエカルテは早歩きで乱れた息のまま、これまでの腑抜けてしまった自分を後悔します。

「早くヴィンターに会ってみよう。保険はかけとかないと」

わん

やっぱりすれ違ってますね!エカルテとイクリス。

結構まだ序盤ですからそこで25%も好感度があれば、結構イクリスはエカルテのことを大事に思っているような気がしますが、

やっぱりエカルテにはここがゲームの中という認識が強いんですね。

2人の今後が気になるところです。




『悪役のエンディングは死のみ』30話の感想・考察

エカルテとイクリスのすれ違いが明確になる30話でした。

死にたくないからとお互いに仮面を被る2人。正直になってしまえば、お互いにうまくいくと思うのですが、そういかないのがこの話の続きが気になるところですよね。

一体エカルテは保険として合うヴィンターとどんな話をするのでしょうか?

そして現時点で攻略者の中で一番高い好感度のイクリスはそんなエカルテにやきもちを焼いたりしないのでしょうか?

まだまだ2人の関係から目が離せませんね。それに他の攻略者たちの動きも気になるところです。

31話も楽しみですね!

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