この記事では『テムパル~アイテムの力~』の58話のネタバレと感想をお伝えしていきます。
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不細工なお兄様?
長嶺星羅と八ノ瀬鈴香が来たと騒がしくなる校内で鈴香は送られる称賛の声に満足そうに手を振って答えます。
調子に乗ってもいいことないよと鈴香を止める星羅ですが、兄に会わせて欲しいと言われると大きな声でお兄ちゃんだけはダメ!と抵抗しました。
とにかく鈴香と兄を会わせないようにしなくちゃ。
そう星羅が慌てていると一番来てほしくない人が声を掛けてきました。
「ちょっと!私まで不細工になるでしょ!」
星羅!と声を掛けてきたのはよれよれの緑色のジャージを着た巧。
一瞬鈴香は本当に星羅と兄妹かと疑いますが、近付いてくる巧を邪険に扱います。
「とにかく乗ってくれよ」
そんな罵倒の言葉もなんのその。巧は2人を連れて路肩に止めてある車のロックを解除しました。
「イケメンのお兄様!行きましょう!」
その車を見るなり態度を180度変えた鈴香は素早く車に乗り込みます。
「ねぇ、なんの用事なの?」
「あぁ、服を選んで欲しいんだ」
翌日、巧は愛車の13に乗り込み、山道をすごいスピードで運転していました。
どうせ自分を笑い者にするためにわざわざこんなところまで呼びつけたんだろうと気持ちは重たくなりますが、今日は違います。
星羅に選んでもらった服に、誰もが憧れる高級車13に乗っている自分はこれまでとはまったく違うのですから
「どうしたんだ?」
同窓会に向かう道すがら、路肩に停められた故障らしい車とその前に立つスタイル抜群の美人がいました。
もう開始時間まですぐだというのに、こんな美人がいたら停めないわけにいきません。
「乗ってもいいですよね?」
おもむろに助手席に乗り込んできた女性の顔を見て、巧は背筋が凍りつきました。
それはサティスファイで唯一TOP10に入る女性ユーザーのユラがそこにいたからです。
なんで、こんなところに
罵倒されてもおかしくないだけのことをユラにしてきた自覚がある巧ですが、なにも言ってこないユラに気付いていないのか?と一抹の期待を抱きます。
「グリード、会えてうれしいですよ」
その言葉に気付かれていると確信しました。
逆転した立場
長嶺が全然来ない!と長年巧のことをバカにしてきた同級生たちは会場で地団駄を踏んでいました。
「いじめる相手がいないからって私に当たらないでよね。こんなところを選んだあんたのせいよ」
けらけらと笑いながら有紗は不機嫌そうな乙木に来ないわけがないでしょと自慢げに笑います。
初恋の相手である私が呼んであげたんだからと高らかに笑う有紗。
キレやすい性格が災いして、最近コンビニバイトでさえ首になったばかりの乙木はいじめる相手を求めてすでにイライラは絶頂です。
借金持ちでニートの巧。
ここにいる会場の誰よりも巧は下の立場でした。
「おい、あれ見ろよ!」
巧の到着を待つ同級生の中の一人が声を上げました。
窓の向こうに見えるのは8000万円を超える高級車の13。運転しているのはもちろん巧です。
「嘘だろ、しかも隣にいるの」
高級車に巧が乗っていることさえ信じられないというのに、一緒に下りてきた人物を見て、さらに騒ぎは大きくなります。
高級車に世界の誰もが知るユラを連れた巧。
乙木も有紗もこれまでいじめ続けてきた巧とは180度変わったその姿に驚きを隠せません。
「あの話、忘れないでください」
驚く同級生たちを見上げている巧に声を掛けたユラはおもむろにその頬に触れると勢いよく顔を近づけました。
「おい、まじかよ!」
同級生たちのいるところから見れば、まるで巧とユラがキスしているように見えます。
ですが、本当のところはユラが巧の耳元に口元を寄せただけ
「これで”借り”は返せたでしょ」
それだけ言い残すとユラは立ち去ってしまいました。
全てを捨て去って
会場に入ってからはいつも通り巧は話題の中心にいました。
ですが、いつもと違うのはその話の内容。
ニートで借金持ちと見下されるのではなく、ランカーでユラの彼氏として見上げられる内容で、誰もが巧と近付こうと声を上げます。
『ふざんけんじゃねぇ!』
こんなはずじゃなかった。
バイトをクビになった腹いせに巧をいじめて憂さを晴らそうと思った計画が台無しだと乱暴にソファーに腰を下ろした乙木。
そんなお着きに巧が声を掛けました。
「お前まだ酒飲んで、喧嘩してんのか?大人になろうぜ」
いままで巧に言ってきたような言葉を向けられて乙木はその首根っこを掴み上げます。
殺してやる。
強く握りしめた拳を見せつけますが、巧はいつものように動揺するどころか、図星だろと笑います。
「どうだ。俺より、見下してた奴より下になる気分は?」
ギラリと光る巧の赤い瞳。
その瞳に見覚えのある乙木はあの時に見た、恐ろしい顔をしたサクリファイスの中のサイコパスのことを思い出しました。
正体に気付いた乙木は力なくどさりとソファーに崩れ落ちます。
「こんなくだらねーところにもう一分一秒だっていたくねぇ」
「前までの事全部忘れましたって顔ですり寄ってきやがって、蛆虫みてぇな野郎どもだ」
それじゃあなと言い残すと巧はさっさと会場を出て行ってします。
「待って、巧くん!」
いまにも車に乗り込もうとする巧を止めたのは会場を飛び出してきた有紗です。
「私もあなたのことが好きなの!」
仲良くしましょう!これまでの傷を癒してあげる!約束するから!と叫ぶ有紗。
その約束という言葉に巧はユラとした話を思い出しました。
ヤタン神殿でのあのクエストを助けてもらったと思っているユラは恩返しとしてヤタン教とツェダカがぶつかったとき
グリードのことを殺さないと約束すると言ったのです。
「もうそういうのはいいよ。それじゃあ」
同窓会のことも、いじめられていたことも調べていたユラは恩返しにと彼女のフリをしてくれました。
それに有紗は前に巧のことをひどく罵ったこともありました。
もうそういうのとは別れを告げようと巧は一人車に乗り込みました。
『テムパル~アイテムの力~』58話の感想・考察
過去と決別した巧の姿が印象的な58話でした。
これまで有紗もそうですし、他の同級生もずっと巧のことをバカにしていて、本当イヤになりそうでしたよね。
ようやく巧がやり返すことができました。
本当なら同級生の事なんて忘れて、真っ直ぐに進んでいけばいいのでしょうが、今回の件で巧もまたなにか吹っ切れたようでした。
それはこれまでの借金返済と同級生を見返すという目標を達成した感覚なのか、それとも違う感覚なのかはまだわかりません。
ですが、今回の一連の流れは巧みにとって非常に大切な一歩だったのではないでしょうか?
さて気になるのは現実世界で接触してきたユラですよね。これから物語はどう進んでいくのでしょうか?59話も楽しみですね!
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